- 外反母趾とは?
外反母趾とは母趾のMP関節部(親指の付け根)で基節骨が外転・内旋し、MP関節周囲に疼痛を生じてくる疾患であり、生活の欧風化に伴い、最近日本においても急増しています。 - 発症の要因
様々な要因が組み合わさって発症するが、外的要因と内的要因に大別できます。
- 外的要因・・・最も大きな要因として靴の問題があげられる。本症はほぼ10対1の割合で女性に頻発するが、これはハイヒールなどのつま先の幅が狭く踵の高い靴を履くことにより、第1趾の前内側に荷重が集中する為と考えられている。
- 内的要因・・・家族発症の報告も多く、遺伝的な素因が関与していることが示唆される。
また外反母趾を発生しやすい足の特徴として、第1中足骨内反・偏平足・第2趾に対して母趾が長いエジプト足・第1足根中足関節の不安定性のある足などがあげられる。
- 変形のメカニズム
- 足のアーチを構成する要素は、骨・筋・関節・靭帯などである。縦アーチは踵骨・距骨・舟状骨・楔状骨・中足骨からなる内側アーチと、踵骨・立方骨・中足骨からなる外側アーチに分けられる。
横アーチは前足部では第1~5中足骨、中足骨では、第1~3楔状骨と立方骨によって形成されている。いずれも各関節は強靭な靭帯によって保護され、さらに後脛骨筋や長腓骨筋などによってアーチが釣り上げられる様に構成されている。 - 足の内側アーチ・・・内側アーチは踵骨、距骨、舟状骨、第1楔状骨の骨配列と、これらを連結する靭帯からなり、内反底屈筋群がこれをサポートする。
- 足の外側アーチ・・・外側アーチは踵骨、距骨、立方骨、第5中足骨の骨配列しこれらを連結する靭帯からなり、腓骨筋群がこれをサポートする。
- 母趾MP関節の支持靭帯・・・側副靭帯と種子骨靭帯があるが、背側では弱い構造となっている。また、中足骨頭は類球状をしており、支持力が弱く不安定である。
- 関与する筋群・・・背側には長母趾伸筋と短母趾伸筋があるが両筋は共にエクステンサーフードを介してMP関節部に固定されている。その走行は弧を描きながら母趾を外側に引っ張るようになっているので、変形に関与していると言える。
底側の筋群はプランタープレートを介して基節骨についている。プランタープレートは、短母趾屈筋腱・母趾外転筋腱・母趾内転筋腱・関節包・足底腱膜から構成されている。
種子骨も短母趾屈筋の腱内に存在しプランタープレートの構成要因となっているが、種子骨靭帯を介して基節骨底側に固定されている。その為一度種子骨が元の位置から外れれば元の位置に戻らない。
中足骨が内反するとプランタープレートは外側に引っ張られ、母趾外転筋は底側に、短母趾屈筋は外側にずれ、種子骨は内旋し、母趾基節骨は外転・内旋する方向に力がかかる様になる。
基節骨は筋内のバランスによってその位置を保っているので一度バランスが崩れると、筋作用は逆に増悪因子となり、変形を進行させることになる。 また、windlassメカニズムによって長母趾屈筋、長趾屈筋などの底屈筋群、足底部固有筋群もアーチを補強する作用として働く。したがって、これらの要素のいずれかに障害が生じると扁平足変形をきたす可能性がある。(骨折、関節炎、靭帯損傷、麻痺、筋腱損傷、先天性障害etc..)しかし、実際は原因が認められない場合が多く、90%以上を占める。
- windlass(巻き上げ機現象)
MP関節において母趾あるいは第2~5趾が背屈すると、短拇指屈筋、短趾屈筋、足底腱膜などがあげられる。その結果、起始となっている踵骨が引き寄せられ、アーチは高くなる。この現象はwindlassとして知られています。
- 症状
変形、疼痛、胼胝(タコ)、機能障害があります。
- 1)変形:程度は年齢と共に著しくなる。初期から中等度の例では、他動的に母趾MP関節を内反方向に動かせるが、進行した例では動きは少なくなる。
- 2)疼痛:バニオン、胼胝による局所の疼痛がある。足全体のだるさ、重苦しい疼痛を訴えることもある。朝方は軽く、夕方に強い傾向がある。バニオン部には発赤腫脹を認める。
- 3)胼胝(タコ):胼胝形成は若年者に少なく、年齢と共に増える傾向がある。母趾内側・小趾外側・第2,3趾MP関節底側部に多い。
- 4)機能障害:靴の形がくずれる、足に合う靴がないなどの訴えがある。歩行が不自由であり、走りにくくなる。
- 鑑別診断
関節リウマチ、痛風、乾癬性関節炎などは外反母趾変形を伴います。治療法が異なるので、必ず除外しておく必要があります。
|
性差 |
好発
年齢 |
局所所見 |
血液検査所見 |
X線所見 |
慢性関節
リウマチ |
女>男 |
20-50歳 |
多数関節
多数関節
羅患、腫脹 |
リウマチ因子
(+)
赤汎亢進・貧血
高γグロブリン |
骨委縮、強直骨破壊、脱臼 |
痛風 |
男>女 |
30-60歳 |
腫脹、発赤
熱感著明
痛風結節 |
高尿酸血症 |
初期には変化が乏しい打ち抜き像 |
乾癬性
関節炎 |
男=女 |
25-50歳 |
全身の皮診
DIP関節の罹患 仙腸関節罹患
その他はRAに類似 |
リウマチ因子(-) |
骨委縮、強直骨融解 |
- 保存的療法
- ハイヒールなどの先の細い靴を履かない
- こまめに靴を脱ぐ
- 長時間の歩行を避ける
- 体重の減少を図る
- 母趾MP関節を内転させ、内在筋の拘縮を予防する体操によって変形の増大を防止する
- 母趾を自力で内転させる運動。(中等度までの外反母趾であれば、訓練することによりできるようになり、進行を予防できる)
- テーピングによる変形の矯正
- MP関節部の痛みに対しては、消炎剤の投与、ステロイド剤の局注。
- 合併する胼胝に対してはパッドを処方。
- 変形の矯正には装具療法。→装具を装着する際には、中足骨の内反を抑止するように中足部を締めることと、基節骨の外転・内旋を矯正することに注意する。靴を履く際には邪魔になることが多いので夜間だけの着用になることが多い。
- 観血療法(手術)
手術適応としては、
- MP関節周囲の疼痛が続く、保存的な治療に抵抗する症例
- MP関節周囲の滑液包(バニオン)の症状が強く、保存においても改善が見られない場合。
- 変形が強い為に履きものに困る場合
ごとう整骨院では外反母趾に対して、足の裏の筋力の強化・テーピングによる変形の矯正を行いながら生活指導(靴の指導や歩き方等)を行い治療しています。
2013年10月より外反母趾の患者さんに有効な靴の取り扱いを始めました!五本指の靴で足の指が一本一本独立して動くので足の裏の筋力アップや足のアーチの改善に役立ちます。
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